【第2回】プロジェクトファイナンスの仕組み – 関係者とストラクチャーの全体像

プロジェクトファイナンス

プロジェクトファイナンスは、多くの関係者がそれぞれの役割を果たすことで成り立つ複雑なスキームです。それぞれの立場と責任を理解することが、プロジェクト全体の理解に繋がります。

プロジェクトファイナンスの主要な関係者とその役割

まずは、プロジェクトファイナンスにおいて中心的な役割を担う関係者を見ていきましょう。

当事者主な役割太陽光発電事業での例
SPC(特別目的会社)プロジェクトの実施主体であり、プロジェクトファイナンスの借入人です。プロジェクトのみを行うことを目的とした特別目的会社(SPC)です。太陽光発電事業を行うためだけに設立された会社。銀行からの融資窓口となり、発電所を所有・運営。
スポンサープロジェクトへのエクイティ性資金の拠出者(=SPCの出資者)であり、KK/GKスキームにおけるプロジェクトの運営主体でもあります。高い信用力・事業運営能力が求められます。太陽光発電事業を立ち上げ、資金を出す企業(開発事業者や投資会社など)。
融資金融機関(レンダー)プロジェクトファイナンスの貸出人(レンダー)であり、金利ヘッジ取引のスワッププロバイダーとなることもあります。事業資金を融資する銀行など。
オフテイカープロジェクトから生み出される財/サービスの購入者(発電事業における電力小売事業者、PFIにおける国/地方公共団体等)です。発電した電気を購入する電力会社など。FIT制度の場合は一般送配電事業者が該当することも。
EPC業者プロジェクトを構成する施設の建設工事を請け負う企業です。太陽光発電所の設計(Engineering)、調達(Procurement)、建設(Construction)を請け負う会社。
O&M業者プロジェクトを構成する施設の運営・管理を請け負う企業です。太陽光発電所の運転開始後の保守・管理業務を行う会社。
アセットマネージャーGK-TKスキームにおけるプロジェクトの運営主体です。スポンサー意向を事業運営に極力反映するために、諮問規定等を通じてAMを用いたスキームを構築することが可能です。GK-TKスキーム(後述)が採用された場合に、SPCの運営や資産管理を専門に行う会社。
その他
・燃料供給者火力発電所プロジェクト等の燃料供給企業(商社、一次生産者)です。(太陽光では直接該当しにくいが、バイオマス発電なら木質チップ供給業者など)
・地権者事業用地の提供者(賃貸人、地上権設定者等)です。発電所を建設する土地の所有者。
・保険会社プロジェクトに関する保険の提供者です。事業リスクに備えるための各種保険(建設中の事故、操業中の損害など)を提供する会社。
・事務受託者決算、税務申告業務等の受託者です。SPCの経理や税務処理を代行する会計事務所など。
・機器メーカー機器メーカー等。太陽光パネルやパワーコンディショナーなどのメーカー。

これらの関係者が、それぞれの専門性を活かし、契約に基づいて互いに連携することで、プロジェクトファイナンスは成り立っています。

スポンサーによる資金拠出の方法

プロジェクトの立ち上げには、金融機関からの借入(デット)だけでなく、スポンサー自身が拠出する資金(エクイティ)も必要です。スポンサーの役割は、主にプロジェクトの運営と資金拠出です。

スポンサーによる資金拠出方法には、エクイティ性資金(株式/社員持分、匿名組合出資)とデット性資金(スポンサー劣後ローン)があります。

形式株式/社員出資匿名組合出資劣後ローン
資金回収方法● 利益剰余金の配当
● 出資の払戻し(資本剰余金を原資とする配当)
● 利益の配当
● 出資の払戻し
● 利息の支払
● 元金の返済
配当/利息と課税【SPC】配当原資は原則として税引後利益(利益剰余金)に限定※SPCレベルでの課税が発生
【出資者】受取配当等が、一定の条件のもとで益金不算入※出資者レベルでの二重課税の是正
【SPC】出資者に対して分配した利益は損金算入可能※ペイスルー税制・二重課税回避
【出資者】受取配当等は益金に参入され課税対象となる
【SPC】支払利息は営業外費用として損金算入※タックスシールド
【出資者】受取利息は益金に算入され課税対象となる

太陽光発電事業において、スポンサーはまず自己資金(あるいはそれに近い性質の資金)をSPCに出資し、それを元手に金融機関から残りの建設資金などを借り入れる、という流れが一般的です。出資の方法によって、SPCやスポンサーの税務上の取り扱いが変わってくる点に注意が必要です。(注)会計・税務面の取り扱いについては、貴社の顧問会計士・税理士にご確認下さい。 代表的な出資スキーム

国内のプロジェクトファイナンスでは、SPCの形態とスポンサーの出資方法によって、主に以下の2つのスキームが利用されています(但し、PFI案件は①のみ)。

スキーム図① KK/GKスキーム② GK-TKスキーム
特徴● 株式会社(KK)/合同会社(GK)をSPCとして利用
● スポンサーは株式/社員持分の形式で資金を拠出
● 合同会社(GK)をSPCとして利用● スポンサーは匿名組合出資の形式で資金を拠出(SPCの社員持分は一般社団法人が保有)
事業運営● スポンサー自身が株主/社員の立場で、またはSPCマネジメント業務の受託者としてプロジェクトの運営を行う
● スポンサーが資金拠出とプロジェクトの運営を一手に担うことから、スポンサーのプロジェクトに対するコミットメントが明確
● 従来から国内のプロジェクトファイナンスで利用されてきたスキーム(国内PFIでも現状このスキームを採用)
● 匿名組合性否認のリスクとの関係で、プロジェクトの運営は第三者であるアセットマネージャーに委託する
● 資金拠出者とプロジェクト運営者が別エンティティ(両者のプロジェクトへのコミットメントが不明確になるおそれ?)
● 従来不動産流動化取引で利用されてきたスキームであり、比較的プロジェクト運営が容易な太陽光発電事業等で利用されることがある

GK-TKスキームとは?

GK-TKスキームとは、SPCとして合同会社(GK)形態を採用し、匿名組合(TK)出資の形態でエクイティ出資を行う投資スキームです。従来は不動産証券化で活用されたスキームですが、近年は国内再生エネルギー案件でも活用されています。太陽光発電の案件でも見られるスキームです。(注)本件SPCはGK-TKスキームを採用。

  • メリット
    • 高度な倒産隔離性
    • ペイスルー課税
    • 利益分配や出資払戻における自由度の高さ
  • 留意点
    • TK出資者はGKの経営に直接関与する権利を有しておらず、営業監視権を持つのみ
    • スポンサー意向を事業運営に極力反映するために、諮問規定等を通じてAMを用いたスキームを構築することが可能
    • 匿名組合性の否認リスク
    • 匿名組合契約: 匿名組合員が営業者(SPC)に出資を行うが、事業運営は営業者に委ね、匿名組合員は利益分配のみ受けるという相対契約
    • 匿名組合性否認のリスク: スポンサーが匿名組合出資を行う一方で事業運営にも関与する場合、当該契約は匿名組合契約とは認められず、民法上の任意組合とみなされるおそれ
    • 金融商品取引法、不動産特定共同事業法等にも注意が必要

どちらのスキームを選ぶかは、プロジェクトの特性、スポンサーの意向、税務上の考慮など、様々な要素を総合的に勘案して決定されます。太陽光発電事業の場合、複数の投資家から資金を集めやすいGK-TKスキームが採用されるケースも増えています。


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