結局、自己資金はどれくらい増える?投資効率を測る7つの指標

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これまでの記事で、物件の収益力(NOI)や最終的な手取り現金(ATCF)の計算方法を解説してきました。しかし、投資判断を下すには、それらのキャッシュフローが「投下した自己資金(エクイティ)に対してどれだけ効率的か」を測る必要があります。

「利回り10%」と言っても、それが1年で達成されるのか、10年かかるのかで意味は全く異なります。また、「投資額の2倍になった」と言っても、それがどれだけのリスクを取った結果なのかを評価する必要があります。

本記事では、不動産投資の効率性を多角的に評価するために実務で使われる、代表的な7つの指標を徹底的に解説します。

期間を考慮した収益率 – IRR (内部収益率)

**レバレッジ後IRR (Levered IRR)**は、不動産投資分析において最も重要な指標の一つです。これは、借入金を含めた資金調達の結果、最終的にエクイティ投資家(あなた自身)が得るであろう収益を、時間価値を考慮して年率換算したものです。

=XIRR(キャッシュフローの範囲, 日付の範囲) というExcel関数で計算されます。

IRRは、投資期間が異なるプロジェクト同士の収益性を比較したり、ファンドが設定する最低要求利回り(ハードルレート)をクリアしているかを確認したりする際に不可欠です。レバレッジをかけることで、以下の表のようにIRRが大きく向上することがあります。

レバレッジによるIRR向上の例

($ in thousands)Year 0Year 1Year 2Year 3Year 4Year 5IRR
Unlevered CF($1,000)$110$110$110$110$1,31014.0%
Debt Funding$400
Loan Repayment($400)
Levered CF($600)$110$110$110$110$91022.6%

投下資本の回収倍率 – エクイティ・マルチプル

**エクイティ・マルチプル (Equity Multiple)**は、投資期間全体を通じて、投下した自己資金(エクイティ)に対して、最終的に何倍の現金が分配されるかを示す指標です。

エクイティ・マルチプル = 分配金の累計総額 ÷ 投下自己資金の累計総額

例えば、エクイティ・マルチプルが2.5倍であれば、1000万円の自己資金を投下して、最終的に2500万円の現金(元本1000万円+利益1500万円)を回収できたことを意味します。計算が直感的で分かりやすいため、IRRと並行して必ず確認される指標です。

ただし、IRRと異なり時間価値を考慮しないため、同じ2.5倍でも、5年で達成するのと10年で達成するのでは、年率換算した収益性(IRR)は大きく異なります。

単年度の投資効率 – CCRと各種利回り

投資期間全体の評価だけでなく、各年度の効率性を測る指標も重要です。

Cash on Cash Return (CCR) / Equity Dividend Rate (EDR)

キャッシュ・オン・キャッシュ・リターン(自己資本配当率)は、その年度の税引前キャッシュフロー(BTCF)が、投下した自己資金に対して何%かを示す指標です。

CCR (%) = その年の税引前キャッシュフロー (BTCF) ÷ 投下した自己資金

これは、その年に「手元にいくら現金が残ったか」を基準にした、非常に分かりやすい利回り指標です。不動産を保有している間のキャッシュフローの状況を測るのに適しています。

Rental Yield (賃貸利回り)

賃貸利回りは、主に物件の取得検討時に使われる簡易的な指標です。特に**グロス・レンタルイールド(総賃貸利回り)**は、経費を考慮せずに、単純な賃料収入だけで利回りを計算します。

グロス・レンタルイールド (%) = 年間総賃料収入 ÷ 物件コスト(価格+諸経費)

運営費や空室を考慮しないため、大まかな収益ポテンシャルを把握するための一次スクリーニングに使われます。

投資回収にかかる時間 – 回収期間

**回収期間法 (Payback Period)**は、投下した資本を、物件が生み出すキャッシュフローで回収しきるまでに、何年かかるかを示す指標です。

回収期間(年) = 投資総額 ÷ 年間キャッシュフロー

「何年で元が取れるか」という非常にシンプルな問いに答える指標ですが、回収期間後のキャッシュフローや時間価値を全く考慮しないという大きな欠点があるため、補助的な指標として利用されます。

各指標の使い分け(まとめ)

これまで解説した指標は、それぞれ異なる側面から投資効率を照らし出します。どれか一つだけを見るのではなく、総合的に評価することが重要です。

指標計算式何を示すか長所・短所
Levered IRRXIRR(...)時間価値を考慮した年率リターン比較しやすいが、計算が複雑
Equity Multiple総分配額 ÷ 総投資額投資元本の回収倍率直感的だが、時間価値を考慮しない
Cash on Cash ReturnBTCF ÷ 初期自己資金単年度の自己資金利回り保有期間中のキャッシュフロー把握に有用
Rental Yield年間総賃料 ÷ 物件コスト経費考慮前のグロス利回り非常に簡易的だが、精度は低い
Payback Period投資額 ÷ 年間CF投資回収までの年数シンプルだが、多くの要素を無視している

プロの投資家は、これらの指標をダッシュボードのように並べて見ることで、投資案件の収益性、効率性、そしてリスクを多角的に評価し、最終的な意思決定を下しているのです。

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