容積率(FAR)とレンタブル比 – 不動産の価値を左右する「面積」の知識

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不動産投資や開発において、「面積」はプロジェクトの規模と収益性を決定する最も基本的な要素です。しかし、実務で使われる「面積」には複数の種類があり、その定義を正確に理解していなければ、プロジェクトのポテンシャルを大きく見誤る可能性があります。

本記事では、特に重要な二つの「面積」の概念、すなわち、

  1. 容積率(FAR): 土地の上にどれだけの規模の建物を建てられるかという「公法上の制約」
  2. レンタブル面積(RSF): 建てた建物の中で、実際に収益を生むのはどの部分かという「収益上の面積」

について、その違いと関係性を図解(表)を交えて解説します。

容積率 (Floor Area Ratio – FAR) – 土地のポテンシャルを決める公法上の制約

容積率(FAR)とは、敷地面積に対する建物の延床面積(各階の床面積の合計)の割合のことです。これは都市計画法などの法律によって、エリアごとに上限が定められています。

容積率 (%) = 延床面積 ÷ 敷地面積 × 100

例えば、敷地面積が1,000㎡の土地で、容積率の上限が400%に定められている場合、その土地には最大で4,000㎡の延床面積を持つ建物を建てることができます。

この容積率が大きいほど、より大規模で高層の建物を建てることが可能になるため、土地の価格評価における最も重要な決定要因の一つとなります。

容積率による建築可能面積の違い

項目ケースAケースB
敷地面積1,000㎡1,000㎡
許容容積率 (Max FAR)400%800%
最大建築可能面積4,000㎡8,000㎡

レンタブル面積 (Rentable Square Footage – RSF) – 収益を生む面積の考え方

建物の延床面積のすべてが、直接的に賃料収入を生むわけではありません。オフィスビルなどを想像すると分かりやすいですが、テナントが専用で使う「専有部分」と、他のテナントと共同で使う「共用部分」が存在します。

  • 専有面積 (Usable Square Footage – USF): テナントが排他的に使用するスペース。オフィススペースや店舗区画などが該当します。
  • 共用部分 (Common Area): ロビー、廊下、エレベーター、トイレ、給湯室など、ビル内の全テナントが共同で利用するスペース。

賃料を計算する際に基準となるのは、専有面積(USF)だけではありません。オーナーは共用部分のコストも賃料に反映させる必要があるため、専有面積に、共用部分の面積を一定の割合で上乗せした面積を賃貸面積とします。これがレンタブル面積(RSF)です。

この「上乗せ割合」を示すのがレンタブル比(Load Factor)です。

レンタブル比 = レンタブル面積 (RSF) ÷ 専有面積 (USF)

例えば、レンタブル比が120%(1.2)のビルで、テナントが100㎡の専有スペースを借りる場合、賃料計算の基礎となる契約面積(レンタブル面積)は120㎡となります。

レンタブル面積の計算例

項目
ビル全体のレンタブル面積 (RSF)12,000㎡
ビル全体の共用部面積2,000㎡
ビル全体の専有部面積 (USF)10,000㎡
レンタブル比 (Load Factor)120% (1.2)
テナントAの専有面積(USF)1,000㎡
テナントAの契約面積(RSF)1,200㎡

まとめ

不動産の「面積」を考える際には、公的な制約と、収益上の実態という二つの側面を区別することが重要です。

  • 容積率 (FAR): プロジェクトの物理的な最大規模を決定するマクロな指標。
  • レンタブル面積 (RSF): プロジェクトの収益ポテンシャルを決定するミクロな指標。

土地の仕入れ段階では「この土地にはどれだけの容積率が許されているか」を、リーシング戦略を立てる段階では「この建物のレンタブル比はどれくらいで、実質的な賃貸面積はいくつか」を正確に把握することが、不動産事業の成功に不可欠です。

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