太陽光発電・風力発電、蓄電事業等はその事業性質上土地を開発するため、土地開発に関連する法令遵守して事業を行う必要がある。
各種法令順守のためにはコストやスケジュールが必要であり、事業を計画する上ではこれらを当初から見込んだうえで事業の意思決定を行う必要がある。そのためにも、そもそも発電事業用地を開発するにあたって、どのような法令が該当するかを把握しなければならない。
本稿では、太陽光に限って法令対応の概論を述べる。基本的な考え方はほかの電源種や蓄電池でも同様なので、本稿の内容を活かすことができるだろう。
なお、事業全体を見通すと用地開発だけではなく、工事中・運用中も遵守すべき法令があるが、これらは本稿の解説の対象外とする。
太陽光発電事業用地の開発における対応が必要な法令(法律・条令)の全体像
例 | 許可申請 | 届出 |
法律(制定主体:国) | 森林法(林地開発許可) 農地法(転用許可) | 森林法(伐採届出) |
条例(制定主体:地方自治体) | 太陽光設置に関する条例 | 景観条例 |
対応が必要な法令を大別すると上のような区分になる。
国が定める法律と地方自治体が定める条例がそれぞれが定める、許可もしくは届出の対応が必要になる。
許可の場合、技術的な許可基準が定められており、当該基準を発電設備が充足していることが許可条件となる。許可条件充足のためには、工事コストが一定程度見込む必要があり事業性を圧迫する。可能な限りコストはかけたくないのが事業者の常であるが、法令遵守は事業者が当然に行わなければならず、必要なコスト・スケジュールは受け入れなけばならない。許可を受けられない場合は工事ができず、事業に甚大な影響を与えることとなる。
届出の場合、極論を言えば届出さえ行えば法令違反とはならず、事業は実施可能だ。しかし、当該法令の趣旨を鑑み土地開発することで、周辺住民および行政等のステークホルダーと良好な関係性を構築しながら事業を行うことが肝要だ。
法令に該当する行為・場所・規模
各種法令を確認すると、太陽光発電事業を行うにあたり、
- どのような行為(土地の形質変更、伐採等)を、
- どのような場所(地域森林計画対象民有林、農業振興地域等)で、
- どのくらいの規模(面積、発電所出力等)で行うか
によって該当法令に基づく許可ないしは届出が必要かが変わってくる。十分に法令の内容を確認してほしい。
地理情報システム(GIS)LUCKYによる該当法律の机上確認方法
法令確認は①机上で確認し上で⓶地方自治体に確認する手順がよいだろう。何も準備せずに⓶地方自治体に確認しにいくと、部署のたらいまわしや要領を得ない回答で時間を無駄にする可能性がある。
①机上の検討方法としては、まずは土地利用調整総合支援ネットワークシステム (LUCKY: L and U se C ontrol bac K-up s Y stem)による確認がよいだろう 国土交通省が公開しているシステムであり、国土利用計画法に基づく土地利用基本計画図を確認することができる。
土地利用計画図の概要は以下のリンクを参考にされたし。
現在の太陽光発電所は分散型PCSを用いており建屋が無いことから建築基準法の建築物にはあたらず、都市計画法上の開発行為には基本的には該当しない。
土地利用基本計画図には「農業地域(農振区域、農用地区域)」「森林地域(地域森林計画対象森林、保安林等)」がある。
これらはそれぞれ農振法、森林法の規制対象となる地域であり、これらをLUCKYで確認することができる。
地理情報システム(GIS)EADASによる該当法律の机上確認方法
LUCKYは、比較的シンプルなUIで分かりやすい一方、表示できる区域の種類が少ない。
ここで紹介する、環境アセスメントデータベース (EADAS:Environmental Impact Assessment DAtabase System)は環境アセスメントおいて地域特性を把握するために必要となる自然環境や社会環境の情報を、地図上で閲覧できる地理情報システム(GIS)で提供されている。
包含されている情報は幅広く、法律(制定主体:国)を含め以下を例に様々な情報が確認できる。
- 法律:「情報選択」>「全国環境情報」>「社会的状況」>「環境の保全を目的とする法令等により指定された地域等(xxx)」
- 防災ハザード:「情報選択」>「全国環境情報」>「社会的状況」>「防災関連情報」
- 日射量:「情報選択」>「再生可能エネルギー情報」>「再生可能エネルギー資源情報」>「日射量マップ」
地理情報システム(GIS)利用の際の注意点
実際に地方自治体が定める法令該当区域と異なる可能性は否定できないため、地理情報システム(GIS)を確認したうえで、地方自治体に確認をとることを忘れないでほしい。
該当法令を把握した後
該当法令に基づき必要な対応を鑑みて、許可・届出をするために必要な工程および見込まれるコストを把握したうえで、事業実施に向けて開発を行っていく。
地権者や水利権者等のステークホルダーとの交渉が必要な法令もあり、その場合ステークホルダーとの同意を得るために、一定の設計を行ったうえで発電事業の概要を説明することが必要になる。この場合、各種検討→交渉といった流れになるので、一定の期間を要することが予想される。
発電事業を最短で進めるためには、各法令に基づく対応や一般送配電の電力系統工事を並行で進め行くことが必要になり、事業のマスタースケジュールの策定が求められる。事業の手戻りを防ぐためにも、開発の初期段階で必要な法令はすべて洗い出し、いつどんな対応が必要になるかを把握することが肝心である。マスタースケジュールの作成概論については別の記事でまとめたい。
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